RPAとは?意味や無料・有料ツールもわかりやすく解説

2021.09.06

RPAという言葉を聞いたことがありますか?

近年はIT化によるビジネスモデルの変化、社会問題である超高齢化社会・人口減少による人材不足、作業効率化の観点からRPAに注目が集まっています。 書類やデータを扱う方であれば聞いたことがある方も多いかもしれません。

本記事ではRPAの解説と、導入するメリット・デメリット、代表的なツールを中心に説明していきます。

RPAとは? AIとの違い

PCに向かって作業する社会人

RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、パソコン上で行う作業を自動化するツールのことです。 パソコン内にRPAツールをインストールして、作業手順を記憶・再現させることで、定形業務を自動化することができます。 日本では人口減少による人手不足が危惧されており、今以上の生産性を維持・向上していくためにRPAが普及し始めました。市場規模も2016年は85億円でしたが、2023年には1,520億円にまで達すると予測されています。 「自動化」ということからAI(人工知能)と混同されやすいですが、明確な違いが2つあります。

  1. AIは判断・認識する脳であり、RPAは指示に従って動く手足
  2. AIは自分で学習し判断できるが、RPAは学習はしない・判断はできない

RPAは一連の流れを全てインプットしておくことで、作業をミスなく再現することができます。

RPAのメリット、特徴

RPAを導入するメリットは主に3つあります。

人件費の削減

誰もいないオフィス

これまで人がパソコン上で視認・識別していた作業も自動化できれば、人員が不要になり、人件費の削減ができます。 月収30万円の社員1人にかかるコストは、給与360万円+その他保険料160万円以上=520万以上。アルバイト(時給1,000円×8時間/日×20日/月勤務)であっても、その他保険料含めると年間210万円以上のコストがかかります。 RPAツールを導入するれば、かかるコスト×人数分の経費を削減できるので、他の部分に予算も当てられるようになる点も大きなメリットです。 他にも、残業の減少や休日出勤の削減にも効果が期待されています。

ヒューマンエラーの防止

繰り返しおこなう単純作業であっても、人が行う場合、時間の経過による疲労・関わる人数が多くなるほど認識違いによるミスが生じやすいです。また、パソコン操作慣れしていない人が担当した場合、ちょっとした不注意による操作ミスが起きる可能性もあります。最悪の場合、1からやり直しになってしまう事態も起こりかねません。 しかし、RPAは作業工程を段階わけした「シナリオ」を作成すれば、大量の作業を長時間つづけても、同じクオリティ・同じ指示内容で進めることができます。 集中力が切れたり、個人差によるミスも発生しないため、全ての処理を同じ品質で仕上げることが可能です。

生産性の向上

笑顔でPCに向かう女性のサラリーマン

RPAなら24時間365日稼働できるので、社員の勤務時間外でも作業を進めることが可能です。また、RPAは人と違い、体調不良や忌引きによる欠勤もありません。一定のペースで作業を進めるため、生産性が安定している点も高い点も大きなメリットです。 他にも前述した人件費の削減対象だった作業に当てていた人員を、別の業務に注力することで、さらなる生産性の向上が見込めます。

RPAのデメリット

RPAは作業を自動化してくれるツールではありますが、注意すべき点もあります。ここからは、導入にあたって事前に知っておきたいRPAのデメリットをご紹介します。

エラーが発生する

エラーのイメージ

処理能力はPC環境に依存するので、低スペック・低容量なPCでは、システム障害やバグなどのエラーが発生する可能性が高いです。 エラーが起きると作業が停止してしまい、予定日時までに処理が終わらない事態になりかねません。 作業量に耐えうるスペックのPCを使用すること・安定したネット環境の構築、余計なソフトやデータで容量が埋まらないようにすることがエラーを最小限に抑えるためには重要です。 また、アプリケーション・OS・インターネット(Chrome,Microsoft Edgeなど)のアップデート時にもエラーが発生しやすいため注意しましょう。 アップデートによりページレイアウトやシステムが変更されれば、シナリオ通りの作業が進まなくなってしまう場合もあります。

データ化されているのが前提

書類やファイルの山

紙媒体の資料(書籍や書類)・画像データやネガポジフィルム・絵画などの現物の情報をRPAを用いて処理するには、事前にデータ化する必要があります。 全て同じ設定で処理・加工するにも現物のままでは作業ができません。 まずはスキャナーを用いて、情報を読み取り、データ化しましょう。

設定ミス / 間違った処理のまま進めてしまう場合がある

RPAはシナリオに従って作業を進めてくれますが、作業工程の設定ミスをしてしまうと全ての処理に適応されてしまいます。 退勤時に作動させて、翌朝には完成しているつもりが、設定ミスにより残業することになってしまってはスケジュールも変更せざるを得ません。 作業量が多いほど、間違って処理したデータを削除する手間も増えるので、1度テストをしてから本作業に移行しましょう。

RPAが向いている作業

作業を自動化できるRPAに向いている作業は主に3つあります。

ルーティンワーク

毎日・毎週・毎月行うルーティンワークを自動化すれば、操作の手間がなくなり多くの時間を捻出することができます。1つの作業は5分で終わることでも、1年で換算すれば約30時間。それが作業数×人数ともなれば更に多くの時間を捻出することができるため生産性の向上が期待できます。

大量の単純作業

繰り返し行うだけの単純作業は、人よりもRPAのほうが正確に行えます。人が行う場合、どんなに単純な作業であっても、時間の経過によりミスが生じやすい。ルールが決まっているチェック業務・データの読み込み・転記作業をRPAに代行してもらうことで、本来行うべき業務に集中できるようになります。

スクレイピング(情報収集)

スクレイピングのイメージ

スクレイピングとは、調べたいキーワード・商品・ニュースなどの情報を収集・分析してくれる機能のことです。1度アクションを作成すれば、何度でも繰り返し使うこともできます。収集したデータをエクセルに出力することもできるので、必要な情報を即座に視覚化したい方には非常におすすめです。 以下にて、具体的な得意作業をまとめました。

得意な作業 具体例
ルーティンワーク
  • 月末に送る請求書のメールを自動送信にする
  • ローカル内のデータを定時にNASへアップロードする
  • 売上データを会計システムへ入力する
大量の単純作業
  • エクセルにまとめる
  • データツールと連携して紙の請求書をデータ化する
  • データ化した情報にOCR処理を加えて文字検索できるようにする
スクレイピング
  • 特定の商品の比較情報をもとに商品開発をする
  • 特定の事業に関するWEBサイトから情報を収集して、業界の流れや顧客のニーズを分析する
  • ニュースサイト内から経済情報だけを収集して、最新情報をチェック

逆に、RPAに向いていない業務はイレギュラーが多く判断が必要・ルールが無く非定形な作業は向いていません。 作業ミスを無くすためにも、処理するデータの整理とシナリオ作成を正確に行いましょう。

代表的なRPAツール

RPAツールには、サーバー型・デスクトップ型・クラウド型の3種類があります。各ツールにはメリット・デメリットがあるので、導入をするのであれば、利用目的にあったものを選ぶことが重要です。 以下にて特徴をまとめました。

RPAの種類 特徴
サーバー型 会社全体での情報管理、一括操作が可能で膨大なデータ処理を行う企業に適しています。作業領域が広い分、導入費用が高いですが、セキュリティ面の安全性の高さから人気を集めています。
デスクトップ型 デスクトップ上の作業が行えて、パソコン1台単位から導入が可能。Windows端末以外は対応していない場合が多いく、RPA使用中はパソコンが使えなくなってしいますが、導入が簡単で、管理がしやすい点から個人・中小規模の利用者に最適のRPAです。
クラウド型 Webブラウザ上の作業の自動化に適したRPAです。ネット環境が整っていれば利用ができて、Mac・Linuxユーザーも使用できることから対応の幅の広さが魅力。初期費用が抑えやすく、必要に応じてスケールアップができる点から様子を見ながら利用したい企業におすすめです。

ここからは上記の特徴を含め、代表的なRPAツールをご紹介します。

WinActor

WinActor HP

(画像:WinActorホームページ よりキャプチャ)

NTTデータが提供している国産のデスクトップ型RPAツールです。国産だからこそ日本企業に合った操作性を実現。2014年1月から販売が開始され、2021年5月時点で6,000社以上※ の企業が採用しています。 ※参考:導入事例

【導入企業例】

  • 東京ガス株式会社
  • 三井レジデンシャルリース株式会社
  • 東急カード株式会社…他

商品ラインナップ
トライアルライセンス 全ての機能を30日間限定無料で使えるお試し版
フル機能版ライセンス シナリオ作成・ロボット実行・問い合わせサポートやその他の特典もフルで利用できる
実行ライセンス ロボット実行のみ可能
有償トライアル 60日間限定で、フル機能に加え、初級研修と2時間のぎじゅつ相談サポートが追加されている

Automation Anywhere

2003年に米国で創業されたクラウド型のRPAツールを開発する企業です。2018年1月より日本支社が設立され、2020年12月に行われたITreview Grid Award 2021 Winter では、RPA部門の「Leader」に6年連続で選出されるほど国内でも高い支持を得ています。 人工知能を活用した言語処理・ドキュメントの文字情報の抽出が行えるIQ Bot、情報の分析を行うBot Insightなど、導入することで様々なサービスの利用も可能です。

【導入企業例】

  • 株式会社 日立ソリューションズ
  • コニカミノルタ ジャパン株式会社
  • ボッシュ株式会社
  • St. James’s Place(英国)…他

商品ラインナップ
フリートライアル 30日間限定で、Automation Anywhere Enterprise A2019のサービスが利用可能
Enterprise A2019 2019年10月からリリースされた最新版。日本語にも対応したクラウド型のRPAツール
IQ BOT 帳簿などのデータを認識し、指定した項目のテキスト情報を抽出するツール

他にも数多くの製品が展開されています。

UiPath

UiPath HP

(画像:UipATHホームページ よりキャプチャ)

2005年よりルーマニアで創業し、現在は米国に本社を構えるUiPathはデスクトップ型を中核としたRPAツールを展開する企業です。2017年より日本法人「UiPath株式会社」が設立され以来、シェアを着実に拡大し、国内大手企業の浸透率1位を獲得しています。

参考:日経コンピュータ 顧客満足度調査 2020-2021 13部門で首位が入れ替わる、「顧客満足度調査2020-2021」結果発表 / RPA国内利用動向調査2020

【導入企業例】

  • キヤノンマーケティング株式会社
  • 住信SBIネット銀行株式会社
  • 株式会社サイバーエージェント…他

商品ラインナップ
UiPath Studio X デスクトップ型のRPAツール。コード不要で操作可能な定番ツール
UiPath Studio Pro AIとの連携や、高度なRPA機能を使用したい企業向けツール
UiPath Insight 自動化した作業の時間や内容を分析し、効果測定をするツール

Power Automate Desktop

Power Automate Desktop HP

(画像:Power Automate Desktopホームページ よりキャプチャ)

Power Automate DesktopはMicrosoftが21年3月3日より無償リリースしたクラウド型RPAツールです。 Windows10ユーザーでOfficeアカウントを持っていれば、無料で使用することができます。Microsoft社のソフトウェアであるOutlook・office製品との親和性が高く、他のRPAツールに比べると操作の手間が少なく済む点が大きなメリットです。 導入ハードルが非常に低く、初めてRPAを利用する方はお試しとして利用してみてはいかがでしょうか。

RPAの導入にはスキャンとテキスト化が必要

ADFスキャナ―

RPAは作業対象がExcel化されていたりテキストデータとして存在していることが前提になることが多いです。そのため、RPAを導入するのであれば、事前に書類をスキャンしてデータ化→OCR処理によるテキスト化が必要になります。 自社内でスキャナーや専用ソフトを導入することも可能ですが、1から操作方法の学びながらデータ整理まで行っていては社内・部署内の生産性が低下しかねません。 スムーズにRPAの導入を実現させるのであれば、スキャンサービスの利用がおすすめです。

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まとめ

RPAは人手不足・作業効率化など労働環境の問題解決の担い手として、社会的にも非常に注目されています。 経済産業省が提唱する「2025年の崖 」でも、日本企業は業務のDX化・自動化が死活問題であり、2025年までに既存の作業プロセスや働き方を変えないと日本経済は年間12兆円以上の経済損失に繋がることを警告しています。

作業効率化・生産性の向上・人件費の削減効果が見込めるRPAが普及していけば、我々の働き方も大きく変化していくでしょう。 新規事業やサービスの開発・ITツールの管理など手を動かす仕事から、クリエイティブな業務が増えてくるはずです。ビジネス形態の変化や流れを理解し、自社に合ったRPAの導入を検討してみてください。