絵画(油絵)の保管方法は?家で出来る方法からデータ化まで解説!
そのままスキャンでは絵画作品のスキャニングも提供しており、お陰様で非常に多くのアーティスト様からデータ化の際にお声がけいただいております。
さて、アート活動をする上で避けられないことの一つとして『作品の保管』という悩みがありますよね。
制作スペースもそうですが、公開後の作品の保管ってどうすればいいの?そもそも、保管の管理って皆どうしてる?アート活動をされている方は各々の方法で実践していると思いますが、一般的にどのような方法があるのか、どういった手段が良いのかを知っておくことはとても重要です。
今回はなかなかかさばりがちな絵画作品の保管方法について、実際にアーティストが実践していること、更には保管したままデータ化して作品を活用できるツールまで合わせて解説していこうと思います。
目次
なぜ絵画は劣化するのか?
そもそも、何故絵画作品は劣化してしまうのでしょうか。具体的な保管の方法へ入る前に、まずはその原因を見ていきましょう。今回は一般的な媒体での現代のアーティストによるアクリル画、また油彩画等の劣化を例にご説明します。
どんな状態になるのか
前提として、油絵やアクリル画においては、経年劣化により退色(色あせ)・黄変等が発生することは避けられません。
一方で、色彩の鮮やかさが数百年も続くテンペラ画のような特殊技法もあります。例えば、宗教画は後世に残す目的を前提とし、卵で溶かれた絵の具は、揮発が速く、水分が抜け、腐る条件が減らす事で、事前のカビ対策が可能となってます。ただしこちらも、制作直後は湿気を避ける等の工夫が必要です。
では、以下にて原因をみてみましょう。
原因① 高温多湿によるカビ問題
四季の豊かな日本は、世界中の中でも特にカビが発生しやすい高温多湿気候の国です。一般的にカビは温度28度以上、湿度60度以上の状況が続くと繁殖される傾向にあり、これはさらに、紙やキャンバスに伸び縮み・カビといった大きな影響を与えます。空調を使用した冬の室内でも同様です。
原因② 紫外線
絵画の天敵である紫外線や直射日光は、キャンバスや紙を変色させ、同様に絵の具を退色させます。
今回は絵画の話ですが、こうした劣化については資料一般にも同じことが言えます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
絵画の保管方法
では、こうした環境下で絵画を適切に保管するにはどうすれば良いでしょうか。
専用の保管サービスを利用するという手段もありますが、ここでは自室で出来る適切な保管方法について解説します。
保管箱等に入れて保管
自宅の一室等で作品を袋・箱に入れ、直射日光が当たらず、温度・湿度変化の少ない、風通しのよい場所で保管する一般的な方法です。
作品は縦に立てた状態で並べて保管しましょう。時々袋や箱から出して風を通すとベターです。
しかしながら、蔵などの特殊な空間のある家では可能ですが、一般的に湿度の気になる日本の住宅では難易度が高いことが現状です。
ファイリングによる保管
作品がファイリング可能な場合、ポートフォリオに使用出来る大きくて頑丈なファイリングケースも適しています。ファイリング出来ないほどサイズが大きければ、製図等を入れる丸いケース(製図ケース、アジャストケース)へ筒状にして入れることも可能です。
保管箱・ファイリングいずれの方法を採ったとしても、貯蓄数が増えれば流石に限界があるかも知れません。その場合は後述する絵画のデータ化・撮影を別途行うことで、最悪原本を破棄することになっても作品を手元に残すことは出来ます。
制作スペースの確保と保管について
作品公開前後などの時期に関わらず、作品の保管場所としてアトリエや自室を選び、そこである程度の量の保管を行っているアーティストは少なくないと思います。その際悩みとなるのは、アトリエの所有スペースは制作する程に反比例していくこと、つまり制作スペースが次第に窮屈になっていくというものです。
制作スペースを広げるメリット
あくまでイメージの話になりますが、例えばIT用語でよく耳にする言葉として『ワークスペース』があります。これはPC等でアプリ等を実行する際に確保されるメモリ領域などを意味するもので、作業空間とも言われますが、この『ワークスペース』が快適だと作業効率も快適になるとされています。空きスペースが出来ればそれだけ速度も改善するからです。
これをコンピューターの中だけの話ではなく、アーティストの作業スペースに置き換えると、やはり理想的なのは、完成した作品がコンパクトに管理されている状態であると言うことができます。これにより制作スペースが広がるため、開放感が上昇し、制作者のアイディアや独創性も高まるといったメリットが期待できる快適な作業空間になります。
作品を保管(保存)する方法は?
では現実的にコンパクトに管理する方法とは、どの様な方法があるのでしょうか。
作品をデータ化する
完成後のコンディションがベストな状態で残す、そして軽量化するとなると、やはり現代ではデータ化が一番の方法となります。カメラ撮影による写真撮影やスキャニングを実施し、ファイルデータとして残すということですね。
この方法のメリットとしては、気軽にPCやスマートフォンといった端末での閲覧ができ、出先でも表示することが可能になることが挙げられます。
もちろんこれは『複製』を保存するだけなので、保管方法とは言えません。作品そのものはどうすれば良いのでしょうか?
芸術品に特化したレンタルスペースで保管
貸しスペース事業は様々な分野で展開されていますが、実は絵画作品専用のレンタルスペースも存在します。ダメージを与えないよう整理しつつカビや害虫などの劣化要因を徹底的に排除し、年間一定の温湿度で管理するという理想的な環境が実現されているので、作品原本に関してはこういったサービスを利用するのが良いかも知れません。
こうした絵画作品専用レンタルスペースの一例として、TERRADA ART ASSSISTの美術品保管庫があります。利用は月額7,000円からと当然費用が発生しますが、幅広い美術品をしっかり保管してくれる上、アトリエや自宅での占有スペースも無くなるため、ストレスなく理想的な方法で保管することが可能です。
●TERRADA ART STRAGE:https://terrada-art-storage.com/
絵画のデータ化
上記サービスでは保管に先立って作品のデータ化(撮影)まで行ってくれますが、この保管サービス利用の有無に関係なく、定期的な作品のデータ化は多くのメリットがあります。
データ化と聞くとアーティストには少々馴染みなく、相反する分野に思われるかもしれません。しかし現代では芸術とデータ化、またその後の分類化も図るアーカイブ保管が目まぐるしい技術的進歩を見せており、両者は密接な関係を築いています。
例えば最新のデータ化の方法として代表的なのが、絵画をはじめとした芸術作品を対象とする様々なアートスキャナーがあります。スキャニングのメリットは多数ありますので、以下にリスト化してみました。
作品に接触しない
例えば、書籍をデータ化するスキャナーには『非破壊型』と呼ばれる本を傷つけないタイプのものもありますが、それでも書籍の表面には接触しなければならないことがほとんどです。
種類によりますが、絵画専用のスキャナーの中には非接触型のものも存在します。例えば絵画そのままスキャンで使用している絵画専用スキャナー“WideTEK(R) 36ART”は、CTスキャンのように作品を置いて上からスキャンするだけなので接触することはありません。
こうしたスキャナーを利用することで、気になる付着からの劣化または破損の恐れをなくすことができます。
撮影時の照明や採光に左右されない
アートスキャナーは作品の色合いに忠実で、色の反射がなく、また金や銀などの発色する色に対しても綺麗にスキャニングすることが可能です。
例えばカメラの場合だと、フラッシュを焚くことにより光が潰されてしまう可能性があります(そのためカメラ撮影では作品を『額』から外すことが前提になることが多いです)。この点、アートスキャナーだと様々な方向からスキャンの光を当てることでその問題を解決することができます。
ピントのずれを軽減
スキャニングでは一定のピント調整が可能となっており、それぞれの絵具等のマチエールといった素材感を十分に捉える事ができます。
データ化した作品は、作品の分類や政策の時系列等でカテゴライズされたアーカイブとすることもでき、近年国内外のギャラリーで活用されています。このデータ化→アーカイブという流れはこれから発展する分野として期待が持たれています。
文化庁でも「保存修復」「コレクター形成と寄付税制」「アーカイブ(資料収集・保管・活用機関)の充実」の3点をテーマに、今後の必要な施策を考えるシンポジウムが開催されるなど、作品のアーカイブ化は官民問わず注目されているトピックです。
●「美術品を守り、ふやし、生かす」① ~文化庁シンポジウムから~:https://artexhibition.jp/topics/news/20190412-AEJ71499/
完成後の作品がアトリエ内で混在? 管理の悩み
ここからはやや補足的なトピックになりますが、制作した作品におけるもう一つの大きなストレスとして、『完成した作品をその後どうするのか』という悩みもあるのではないでしょうか。
この問題は言い換えれば、作品展が終わり、自分の手元を離れない作品たちとどう付き合うかということになります。最悪なケースとしては、時間の経過に伴い、本人が作品そのものを忘れてしまうということもあります。
現代では様々な方法がありますが、大きな鍵となるのはインターネットです。その後の作品の取り扱いについて解説していきましょう。
Webサイトで作品を公開する
作品をデータ化した上で、テーマ別に一覧閲覧ができるようWebサイト上で公開する方法です。
知識のない状態から自前で作るのは少々難易度が高いものの、いつでも自分で分類や時系列がわかり、その他にも世界中の人からのアクセス、閲覧することが可能となります。また、そのサイトをSNSでシェアし、ネットワークを拡大できるもメリットの一つとなってます。
先述した様に本格的なアーカイブサイトを作成するには専門的な知識が必要ですが、簡単に作品を掲載する程度のシンプルなWebサイトであればそれほど難しくありません。現在では、Webサイトの作成も自分自身で簡単に作成できるCMSやホームページビルダーの使用が可能となっているので、ハードルが低く気軽に取り組める方法となっています。
WEBサイトで作品を公開しながら販売する
前項の延長になりますが、昨今、アーティストが作品をWEB上で販売するECサイトに注目が集まり、様々なサイトが誕生・拡大しています。
様々な媒体の芸術作品、またアーティストによってECサイトに個別にページが設けられ、幅拾いニーズに合わせて売買ができる様なシステムです。サイト開設にはアーティストの活動ペースに合わせ、無料から有料まで様々な設定が可能となってます。例えば作品販売サイトのアートメーターでは、作品の総面積(㎠)によって絵の販売価格を決めるというユニークな仕組みを採用しています。
●アートメーター:https://www.art-meter.com/
絵画作品の保管 まとめ
現代を生きるアーティストにとって、制作後の作品への保管の悩み、またその後の公開や管理についてキーワードとなるのは、『作品のデータ化』そして『インターネットの活用』ということになるのではないでしょうか。一方、実際の作品に関しては、これまでの保管方法から学び、応用した管理法、もしくは広まるレンタルスペースのサービスを利用する方法が考えることが出来ます。
インターネットへの活用については、これから更に5Gネットワークの時代を迎えるとなると沢山のコンテンツで大きな飛躍を促す分野となるのではないでしょうか。大量にアーカイブされた作品が、インターネット上でサクサクと容易に閲覧、検索が可能となるかも知れません。
そう考えると、将来のアーティストの制作スタイルも想像を超えたものとなりそうとなり、楽しみですね。
様々なアート作品を非接触でデータ化するサービス
- 東日本に一台のアート専用スキャナーを使用
- 最大サイズ152cmまで一度にスキャニング
- 3D配光機能で作品の立体感を細部まで再現
- 当日の持ち込みスキャンも対応可能