プレスリリースとは?メリットや作り方を紹介
「プレス」は、英語で「press」と表記され、テレビや新聞や雑誌などを含む報道機関やマスコミを意味する言葉です。対して「リリース」は、「release」という単語で、情報を公開(公表・発表)するという意味です。
つまり、「プレスリリース」とは、広報活動の一環として、ある情報を報道機関へ向けて公開することです。今回はこのプレスリリースを取り上げて、プレスリリースとは何なのか、その意味や効果や書き方などを説明したうえで、どんな種類があるのか、また保管の仕方についても、紹介していきます。
目次
プレスリリースとは?
まず、プレスリリースとはどういったものなのかを説明します。
意味
「プレスリリース」の意味を辞書で調べると、三省堂の大辞林第三版では、「官庁・企業・団体などが広報のために、報道関係者に向けてする発表。また、そのために配布する印刷物。ニュース-リリース」と記載されています。
わかり易く言うと、プレスリリースとは、企業が自社の新しい製品やサービスに関する情報や、株主や投資家へ向けて行うインベスター・リレーションズ(IR)関連の情報を、テレビや新聞や雑誌、あるいはインターネットのニュースサイトなどのマスメディアに対して公式に発表することです。
このプレスリリースは、企業や団体がマスコミに自分たちのニュースを売り込んでメディアで報道してもらう「パブリシティ」というPR(パブリックリレーション=広報)活動の1つで、広告とは違って無料で行うことができます。
ちなみに、PR(「public relations」の略語、広報)とは、政府や企業と民衆との良好な関係を築くために発達した双方向型コミュニケーションツールのことで、20世紀のはじめにアメリカで誕生しました。最初は政府や企業が民衆の理解を求めるために一方的に語りかけるといったものでしたが、それがやがて時代と共に双方向型のツールに概念を変えたとされています。日本においても、双方向型広報を目指しているところもあるようですが、未だに一方向型の広報が多く見られます。マスメディアに対して一方的に情報を伝えるプレスリリースもこの広報に属します。
マスメディア側では、このプレスリリースを受けて、これはたくさんの人に伝える価値がある、と判断した場合に取材に入って記事にし、広く報道をします。このプレスリリースは、マスコミの関心と興味を引くことが可能な内容であれば、費用をかけずに広くPRすることができる非常に有効な広報活動だと言えます。
では、このプレスリリースのはじまりはどこにあったのでしょうか。
プレスリリースの歴史
プレスリリースの発祥は、1906年にアメリカのニュージャージー州で起こった鉄道事故にあります。50人以上の死者を出したその事故は、保有会社であるペンシルバニア鉄道会社の広報のアイビー・リー氏によってプレスリリースとして公開されました。そのリリースは世間の注目を浴び、ニューヨークタイムズでも取り上げられたと言われています。
プレスリリースのメリット
プレスリリースには、次のような3つのメリットがあります。
1. コストがかからない
上述のように、プレスリリースの場合、広告と違って、電話代、郵便代、印刷代程度で、自分たちの情報をマスコミに流すことができます。
2. 高い信頼性を得ることができる
広告は、反社会的な内容でない限り、原則としてだれでもお金さえ払えば広告主になることができ、その内容も広告主が作成したものがそのまま反映されます。つまり広告主が自分の利益になるような情報だけを発信するものです。読者や視聴者はそのことをよく知っているために、広告を信頼性の高い情報だと見ることはあまりありません。広告にまったく関心を示さない消費者も少なくありません。
それに比べて、プレスリリースは、マスコミという第三者が、報道または記事として取り上げているということから、世間では信頼性の高い情報だと見なされて、多くの読者や視聴者の関心を得ることができます。
3. 瞬時に、しかも膨大な数の人々に情報が伝達・拡散される
テレビや新聞、大手サイトの視聴者や読者は、数百万~数千万人だと言われています。マスコミで報道されると、それだけの人に一気に情報を流すことができます。それも広告ではなく、信頼性の高い記事として紹介されます。
プレスリリースによって、その企業や団体の知名度が格段に上がり、製品やサービスが多くの人に知れ渡って注文が殺到するようになったり、紹介された製品やサービス以外のほかの製品やサービスも売れるようになったり、入社を希望する人が増えたといった効果が発生します。
また、ある新聞で取り上げたプレスリリースがきっかけで、テレビや雑誌の取材が入って、連鎖的にいろいろなマスコミで紹介されるといったことも多々あります。
プレスリリースのデメリットは?
デメリットと言うよりも、プレスリリースには、以下のような、ある種の厳しさ・難しさがあります。
1. なかなか取り上げてもらえない
新聞社やテレビ局には、毎日膨大な数のプレスリリースが届けられています。つまり競争率が非常に高いということです。首都圏に至っては、宝くじに当たるようなもの、と言われているほどです。
どのメディアも、世間に告知するに値する、ニュース性や話題性の高いものを選んで紹介するわけですが、やはり知名度の高い大手企業やスポットに関するものが目につき易く、知名度の低い企業や団体の情報はなかなか取り上げてもらえないようです。
一方で、取り上げてもらえない理由はプレスリリースの内容にある、という意見もあります。どういうことかと言うと、マスコミの視点でプレスリリースを作成していないものが多くなっているということです。広告主のような手前味噌の「宣伝」(「propaganda」、特定の考え方を一方的に押しつけるもの)は、まず取り上げてもらえない、と考えておいていいでしょう。
2. 記事の内容に関与できない
広告と違い、プレスリリースの場合、それを取り上げたマスメディアは情報の発信者からお金を取りません。つまり、記者は自分が感じたことを自由に記事にすることができるということです。プレスリリースを発信した企業や団体は、取材を受けるだけで、その記事の内容には関与できません。
記者は、第三者の目で冷静かつ公正に取材をして記事にします。報道されたはいいが、取材で語った、これだけは伝えたい、と思っていたことが省略されていたということはよくあることです。また、好意的な内容で紹介される場合もあれば、時によっては、批判的な内容で紹介されてしまうという場合もあるようです。
プレスリリースの構成と書き方
プレスリリースは、自分たちが伝えたいことを書くものではなく、記者が欲しい情報を提供するものです。これがプレスリリースを作成する時に最も重要なポイントです。
では、そのプレスリリースはどのように作成したらいいのでしょう。以下に、プレスリリースの構成と書き方について、注意点も含めて説明していきます。
1. プレスリリースを作成する際の注意点
主な注意点は以下の4点です。
- プレスリリースはA4サイズで縦向き、1~3枚程度に抑える
- Wordなどで作成し、最後はPDFに変換する
- フォントはゴシック体か明朝体で
- 文体は「です・ます」調で
2. プレスリリースの基本的な構成
プレスリリースは、次の順番で作成していきます。
- ①ヘッダー
- ②タイトル(サブタイトル)
- ③リード文
- ④画像
- ⑤本文
- ⑥お問い合わせ先
3. 書き方
①ヘッダー
受け取った報道関係者が目にした瞬間に、プレスリリースだということがわかるようにこのヘッダーをつけます。日付と自社の会社名や団体名も忘れずに記載します。
②タイトル(サブタイトル)
受け取った記者は、まずタイトルを見て報道価値があるかどうかを判断します。そのために、タイトルは非常に大事で、プレスリリースの命だと言われるくらいです。
インパクトのある言葉を使ってタイトルをつける必要がありますが、同時に、記者がそのタイトルを目にした瞬間に、意味を把握できるような長さで書く必要があります。メインタイトル30文字、サブタイトル30文字くらいで収まるようなものを考えましょう。
この時に注意しなければならないことは、メディアの立場で考えることです。つまり、事実だけを伝えること。決して客引きのような誇大な表現を使ったり、チラシやネット広告などで使われている宣伝文句やキャッチコピーは使わないことです。また、「!」や「?」、色付き文字や下線などは、広告っぽいと見られて嫌われます。
何度も繰り返すようですが、客観報道というマスメディアの立場を十分に理解して作成することが大切です。
③リード文
これは、プレスリリースの内容を1~3行で簡潔に伝えるものです。記者がここを読んで大体の内容を把握できるものでなければなりません。したがって、リード文には、だれが何をいつどうするのか、といった情報を盛り込む必要があります。この場合、新聞記事の基本要素である5W1H(When=いつ、Where=どこで、Who=だれが、What=何を、Why=なぜ、How=どのように)を思い浮かべながら書きましょう。
無理矢理に5W1Hのすべてを書き込む必要はありません。例えば、「○○株式会社は、………という新しい製品「△△△△△」を×月×日にリリースします」といったように、最低でも、「誰が何をいつどうするか」がわかるように書きます。この会社名や団体名の後に本社の所在地などを( )に囲んで書き入れる場合もありますが、長くなって見た目がわずらわしくなる場合は、注釈のような形で書き入れても構いません。
④画像
プレスリリースでは、画像はタイトルと同じくらいに大事です。また、画像は一瞬にして目に飛び込んできて、多くのものを語りかけてきます。そういった意味でも、本文の内容を的確に語る画像を選びましょう。この場合、高解像度の画像を選んでください。枚数は1枚か、せいぜい2枚にとどめます。
⑤本文
プレスリリースは、この本文で紹介したい内容を説明していきます。ここで意識しなければならないのは、上述の5W1Hですが、この本文では、プレスリリースで伝えたい内容に応じて5W3H、つまり、How long(どのくらいの期間)とHow much(どのくらいの費用)を追加して書き込みます。
この本文で最も大切な要素は、「社会的背景」です。どういうことかと言うと、「この製品は、こういった視点や理由からこのような社会的貢献ができる」とか、「こういった形で社会に役に立つ」といった、社会とのつながりを具体的に明記する必要があります。それは、例えば、地域貢献でもいいですし、シニア世代を応援するといったものでも構いません。
また、「ニュース性」も評価の対象になります。よい内容なのに、すでに同じようなものが出回っていては、マスメディアが報道する価値が下がってしまいます。プレスリリースで紹介したいものに、どのようなニュース性があるのかをわかってもらえるような内容にしたいものです。
残念なことに、このようなポイントを押さえずに、多くのプレスリリースが製品やサービスの仕様に終始していて、取り上げられることなく捨てられているというのが現状のようです。また、宣伝に終始しているものも多いようです。プレスリリースは、宣伝や広告ではなく、マスメディアが報道記事として取り上げるものです。この視点を忘れずに、記者が取材したい、と思う社会的価値のあるプレスリリースを作成しましょう。
⑥お問い合わせ先
ここには、以下の情報を記載します。
- 会社名、担当部署名
- 担当者名
- メールアドレス、電話番号
ただ、ここで注意しなければならないのは電話番号です。この電話番号は、常につながる番号を書き入れます。取材したい、と思って電話をしたのにつながらなかったことで、次の候補者に連絡がいくということも多々あるので、ここは、担当者の個人の携帯電話でもいいので、常に連絡が取れる番号を記載する必要があります。
4. その他の注意点
お問い合わせ先に、一般の方たち向けの電話番号も記載しておくことをお勧めします。マスメディアに報道された時に、それを見た消費者が何か問い合わせたいことがあった場合、わざわざ連絡先を探す手間が省けて喜ばれるだけでなく、そういった配慮からその企業や団体に対するイメージがアップするはずです。
また、プレスリリースの送付方法ですが、メールよりも郵送をお勧めします。記者には毎日すごい数のメールが送られてきます。記者は本当に忙しく、ともすれば、メールの件名だけを見て判断をし、本体を開けることもせずにゴミ箱行きにすることも多いようです。ちゃんと目を通してもらうためにも、少々面倒かもしれませんが、プレスリリースは郵送するようにしましょう。
5. プレスリリース作成代行業社やプレスリリース配信サイトの利用
自分たちで効果的なプレスリリースを作成するのが困難な場合、コストは発生しますが、「プレスライタープロ」などのプレスリリース作成代行業者に依頼することもできます。また、原稿は何とか作成したが、送付先のメディアリストがなくてどこに送ったらいいかわからないような場合は、「PR TIMES」、「@Press」、「Dream News」などのプレスリリース配信サイトを利用して、多くのメディアに一斉に配信してもらうという方法もあります。
それぞれの会社ごとに提供しているサービスの内容やオプションが異なりますので、よく調べてから依頼するようにしましょう。ただし、こういった専門業者にお金を払ってプレスリリースを作成・配信してもらったからといって、必ずしもマスメディアに取り上げられるという保証はありません。
プレスリリースの種類
プレスリリースは、その企業や団体のために発信するものではなく、マスメディアにとって報道するための情報=ネタを提供するものです。では、そのプレスリリースは、具体的にどんな内容のものがあるのでしょう。
目的別に分けると、プレスリリースは、①マーケティング活動を目的とするもの、②広報を目的とするもの、③危機管理を目的とするもの、といった3つのタイプに大別されます。以下に、これらのタイプにはどんな種類のプレスリリースが含まれているかを示します。
①マーケティング活動を目的とするもの
マスメディアや消費者にとって最も関心度の高いプレスリリースです。
- 新しい製品やサービスの発表
- 製品やサービスのリニューアルや価格の改定
- イベントやキャンペーンの開催の告知、開催後の報告
- 他社との業務提携
- 新たなイメージキャラクター採用の発表
- 新規CM放映や広告展開の発表
- 市場調査の報告
- 社員や製品の受賞発表
②広報を目的とするもの
企業や団体に関する情報を提供するためのプレスリリースです。
- 総務や人事関連
- 業績発表
- 決算報告
- 他社との合併や新会社設立の報告
- 社名やロゴの変更の発表
- 他社のサービスやシステムの導入の発表
③危機管理を目的とするもの
不祥事や欠陥製品などに対する謝罪や対応に関する発表、誤情報に関する訂正やそれに代わる正しい情報の発表が挙げられます。
プレスリリースはどうやって保管するの?
プレスリリースは、その企業や団体の歴史を語る大切な資料でもあります。その歴史が長ければ長いほど、プレスリリースの量も増えていきます。そういった資料を、企業や団体はどのように保管しているのでしょう。
紙ベースでの保管
社内で作成した資料は、個人文書と共有文書の2つに分かれます。個人文書は、個人の参考資料などで、その個人が保管管理するものです。これに対して、共有文書は、正式な文書であり、社内の誰もがいつでも見ることができるように保管管理されなければなりません。プレスリリースは後者の共有文書に該当します。
多くの企業では、法定保存文書以外の社内文書に関して、その企業独自に設定した、文書管理規則のようなルールに則って、文書の保管管理が行われています。大体の場合、プレスリリースなどの文書を作成したら、データをそのパソコンの中に保存したうえで、プリントアウトしてファイリングし、所定の棚に保管します。
しかし、限られた社内スペースに保管できる数は知れています。歴史が長い会社であればなおさらのこと、ファイルはどんどん増えていき、やがてそれらのファイルは、会社の地下や別棟にある倉庫へ移されます。そういった自社の倉庫がないところは、倉庫会社に保管を依頼するところも多いようです。
こうなると、ある特定の情報が必要となった場合、それを見つけ出すために保管場所へ赴き、ファイルを探し、そこから該当のプレスリリースを探し出す、という、気が遠くなるような多くの時間と労力を費やさなくてはなりません。その間、その作業に関わることで、担当者の生産性は低下してしまいます。
保管を依頼している倉庫会社によっては、必要な資料を見つけて届けてくれるといったサービスを提供してくれるところもあるようですが、おそらく多額のコストが発生すると考えられます。
電子化で保管
そこでお勧めするのが電子化による保管です。企業の中には、すでにこの方法を採用して、プレスリリースだけでなくすべての社内文書を電子化することで保管し、業務の効率化を図り、生産性を上げているところがあります。
文書を電子化すると、グループウェア、社内wiki、社内ポータルサイトなどの社内イントラネットツールを使うことで、文書の保管場所を統一したり、ファイルの共有化を可能にしたり、必要な情報を瞬時に検索したりすることができるようになります。
プレスリリースも電子化することで、社内の誰もが自分のデスクトップですべてのプレスリリースをいつでも閲覧できるようになります。タブレットがあれば、どこにいても閲覧が可能になります。
記念誌などもそうですが、自分が所属している企業の歴史を物語る貴重なプレスリリースが紙ベースで保管されてしまうと、そのファイルを開けてバックナンバーを読み返すといったことがなかなかできなくなります。これはとても残念なことです。
しかし、電子化し、社内全体で共有できるようにすれば、いつでも時間があるときに読み返すことができるようになります。ふっと、あの製品はいつ頃リリースされたのだろう、とか、あのイベントはどこで開催されたのだろう、などといった疑問も、すぐに解消できるようになります。
また、電子化で保管した場合、紙ベースの文書のように劣化したり損傷することがありません。完璧なデータとして後世へ残していくことができます。
電子化による保管一本に絞って、紙ベースのプレスリリースや文書を廃棄するところもありますが、ほとんどの企業では、電子化と紙ベースの両方で保管を行っているようです。
ただ1つだけ、電子化による保管を行う場合に生じる問題があります。バックナンバーもすべて電子化する必要が生じるということです。そうなった場合、データの残っていない紙ベースのバックナンバーを入力してデータ化しなければなりません。数枚ならば空いた時間でできるかもしれませんが、過去何年、何十年にさかのぼって入力するとなると、大変な作業になります。こういう場合、電子化代行業者に依頼すれば、作業の効率化や生産性を低下させることはありません。
そのままスキャンでもプレスリリースなどの社内文書の電子化を行っています。しかも非破壊スキャナーを使用しているために、オリジナルのプレスリリースを裁断せずに電子化を行うことができ、過去には株式会社WOWOW様のプレスリリース30年分をまとめてスキャンした実績があります。
同様のお悩みをお抱えの方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
数多くの誇大広告やあくどい広告によって、消費者は、広告や宣伝といったものをほとんど信じなくなっています。ことにインターネットが普及した今、どこかのサイトを訪れたりSNSを立ち上げた瞬間に見たくない広告が表示されるようになって、広告アレルギーになってしまった、というユーザーも多いようです。
そんな中、マスメディアの報道は、客観的な立場で取材して行われるということから、多くの消費者がその内容を安心して受け入れます。プレスリリースは、そういった消費者の心理に働きかけるために、取り上げられさえすればとてもよい効果を発揮するというのもうなずけます。
問題は、記者が「取り上げたい」と思ってくれるようなプレスリリースを作成すること。毎日何百件と送られてくるプレスリリースの中で、キラリと輝いて記者の目を引くプレスリリース、頑張って作成してみましょう。
●参考:http://yuuzakiofstyle.com/2018/03/08/how-much-does-it-cost-to-write-a-press-release/