最高データ責任者(CDO)とは?企業における役割を解説

2019.06.04

最高データ責任者(Chief Date Office)」という言葉を聞いたことがありますか?

近年、IT化が凄まじいスピードで進み、情報やデータは企業にとって魅力的な資産として認識されるようになってきました。その中で、「収集した貴重なデータをどのように活用すれば企業にとって効果を最大化できるか」という課題を解決する役割が「最高データ責任者」です。組織全体の情報の管理・統括およびデータを分析し、新たな収益機会の発掘、認知度向上につなげるなど自社に蓄積されたデータに価値を見出すことが求められるため、最高データ責任者には高度なアナリティクス能力が必要とされています。

最高データ責任者の役割

CDOの業務イメージ

「最高データ責任者」という役職は、ビッグデータに注目が集まり出したインターネット普及時と同じタイミングで登場したと言われています。ビッグデータが本格的に企業の事業活動に活用され始めた2011年以降に、CIO(最高情報責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)などと同様に注目されるようになった役職です。

その分、歴史も浅く、その役割やポジションは、大枠の意味合いは決まっていますが、はっきりと定義づけされているわけではありません。そのため、その役割は企業によって異なります。

アメリカでは2015年時点で、企業全体の7%で設置されており、数々の大手大企業や政府機関を顧客に抱えるIT分野のリサーチャーおよびアドバイザリー企業・ガートナー社によると、2019年末までには大手企業の90%が最高データ責任者の役職を設けると言われています。このIT社会では、今後ますます必要性が高まっていくポジションです。

最高データ責任者と最高デジタル責任者の違い

2つのCDO

また、最高データ責任者とよく似た役職として、「最高デジタル責任者(Chief Digital Office、CDO)」があります。どちらも同じ「CDO」と省略される上に、文字上では似たような意味合いに捉えられやすい役職です。

最高データ責任者の主な役割は、企業が保有している情報・データの活用をし、組織を伸ばしていくことです。そのため、データ分析に関する豊富な知識が求められます。

それに対し、最高デジタル責任者は、データの活用だけでなく、そのデータを元に新規事業を立ち上げたり、組織全体のデジタル化を促進させたり、データ活用の先までを担うことが多く見受けられます。そのため、マーケティングや経営企画に関する豊富な知識が必要とされます。

料理で例えると、最高データ責任者が最高の食材や調理器具を準備し、最高デジタル責任者はそれをより美味しく調理するようなイメージです。そのため、最高データ責任者と最高デジタル責任者が連携をとり、組織をIT化の波に最適させていく体制が理想と言えるでしょう。

今後ますます情報・データが企業の資産として価値高くなっていくことを考えると、最高データ責任者は今後の経営を左右する重要な決断を下すために、かなり重要な役割となるでしょう

最高データ責任者の現状

CDOイメージ

インターネット上には、様々なデータが蓄積されており、さらには日々そのデータは更新されています。最近では、そのデータが情報資産として高い価値を秘めていると理解し始めた経営者も増えてきました。今となっては、変化の激しい現代を生き抜くための経営判断材料として、情報資産は必要不可欠と言っても過言ではありません。

実際に、自社のマーケティングや新規事業・企画開発のために、ビッグデータを活用しようとしている企業はたくさん存在しています。日々蓄積と更新を繰り返す膨大なデータをうまく活用できれば、大きなビジネスチャンスを手にすることができ、これからの時代を生き抜くための強力な武器となるでしょう。

しかし、実際にビッグデータが普及してからも、そのデータを上手に活用できている企業は半分もないと言われています

そこには「データ分析者がいない」という問題点があります。

膨大なデータはあっても、それを分析し、自社にどう落とし込めば、新たな事業や利益の創出につながるのかを考えられる人材がいない壁に多くの経営者がぶつかっています。逆に言うと、データが分析できれば競合他社が思いつかないような画期的な戦略を打ち出し、強固な競争優位性を作り出せるということです。そういった点からも今、最高データ責任者は企業から強く求められているのです。

また、会社によってはそもそもデータを適切に管理できていないという問題点の解決から始めなければならない会社もあるでしょう。適切に管理できていないということは、必要なときに欲しい情報が出てこないということです。そうなってしまうと業務効率が落ち、会社の生産性も下がってしまいます。また、それだけでなく、コンプライアンスに抵触するリスクもあります。

日本の大多数の会社も例外ではありません。自社に蓄積されたデータを活用しやすく管理・統括し、その膨大な情報の海の中から有益な情報を選び抜き、戦略を練り、実行させることができずに、伸び悩んでいる企業はたくさんあります。また、そういった企業は組織全体としてITに乏しい傾向にあるため、今後も加速し続けるIT化の波についていけずに大幅な遅れをとってしまう恐れもあります

そこで最高データ責任者には、それらの会社が抱えるデータに関する全ての問題を解決するプロフェッショナルとしての役割が求められています

最高データ責任者の仕事

ここまで、時代背景と合わせて最高データ責任者の重要性について紹介してきましたが、実際にどのような業務をするのかについて紹介します。

データ全般の管理・統括

分析

今までの事業活動の中で蓄積された膨大なデータの整理を行います。どんなデータをどのように収集し、どのように管理しているのか、というデータ収集における一連の流れを整備し、統括します。

「社内にどのようなデータが蓄積しているのか?」、「どのように管理をしたら、必要なときに取り出しやすいか?」、「コンプライアンスやセキュリティを考慮すると、どのように管理するのが適切なのか?」などあらゆる側面を考慮する必要があるため、高度なリテラシーが求められます。

データ分析およびデータ戦略の考案

データの管理

社内に蓄積されたデータを元に、自社の現状を正確に把握し、強みや課題を明確化します。根拠が信憑性の高いデータなので、不確実性を嫌う経営陣を説得できる精度の高い分析を実現することができます。

そして、その分析をもとに自社が競争優位性を発揮できる戦略を考えていきます。自社とマーケットの関係性や季節変動やトレンドなど多くの変数も含めて考えなければならないので、マーケティング感覚も兼ね合わせておく必要があります。

データ戦略による競争力強化

戦略

最高データ責任者には、考案した戦略を実行させ、成果に結びつけることも求められます。精度の高い情報をもとに練り出された戦略はかなり高い効果が期待できます。なので、机上の空論で終わらせてしまっては意味がありません。考え抜いた戦略を実際に動かして、自社の競争優位性を高めていきます。

新たな戦略を実行させるためには、経営陣を説得したり、現場で機能するように周りに指示を出したり、マネジメント能力も必要不可欠です。

また、その戦略を実行している間にも、新たなデータが蓄積されていくので、それも加味した上でPDCAを高速回転させて、さらに改善させていきます。

データ化に適応できる組織改革

組織改革

これからの時代は、IT化の流れに適応できない会社が生き残るのは厳しいと予想されます。その中で社外戦略と同じくらい重要なのは、社内戦略です。社内でもIT化していく社会に適応できないと会社のスピード感がどんどん鈍化して、加速し続ける社会についていけなくなってしまいます

たとえるならば、スマートフォンを使わずに生活するようなものです。メールも電話も使わずに、直接もしくは郵送のみでやり取りをしていたら、意思決定が遅くなってしまうことは容易に想像できます。IT化に適応しないということは、そういった不便な状態でい続けるのと同義です。

しかし、実際に社内を見てみると、ITの知識が豊富な人は少ない会社の方が多いのも事実でしょう。そのため、会社全体のITリテラシーを強化し、データ化の流れに適応できる組織改革を行うのも最高データ責任者の役割の1つです。

最高データ責任者に求められる能力を一言で言うと、経営課題をデータで解決する能力です。そして、その能力を発揮するシーンは、経営に関わるマーケティングから社内強化までかなり広範囲におよびます。

また、先述した通り、最高データ責任者は最近注目され始めた役職のため、全世界共通の明確な定義があるわけではありません。会社によっては別の役割を担っていることもあります。そのため、「最高データ責任者とは、こういう役割である」と断定できるものは未だなく、強いていうならば「データを元に会社のありとあらゆることを解決する」というのが役割と言えるでしょう

最高データ責任者の課題

課題

そんな現代社会で注目され、需要も高い最高データ責任者ですが、日本での認知度はまだそこまで高くありません

そのため、最高データ責任者がその役割を実行するにはたくさんの課題が存在しています。その中でも特に大きな課題が「変化を受け入れようとしない企業文化」です。経営者は社会のデジタル化の流れに適応する必要性を重々痛感しています。しかし、最高データ責任者のポジションを設置することで得られる効果の不確実性が高く、なかなか意思決定の段階で足踏み状態になりがちです。

また、経営陣もデジタル化適応への緊急性は理解しているにも関わらず、どのようにするのが正解なのかわかっていないことの方が多々あります。そんな経営陣が無理解な状態のため、施策を提案しても理解が得づらいのが実態です。そのため、現場でも強く指揮を振るうことができずに、上層部からも現場からも風当たりが強い中で責務を全うしなければいけないという窮地に立たされることもあります。

また、最高データ責任者のポジションを設置する以前に、そもそもデータが一定のルールに則って整理されておらず、乱雑にデータ管理がされている会社も少なくありません。それぞれの社員が管理しているメールや手書きの文書、画像など会社にとって重要であるにも関わらず、データ化されていない非構造データが数多く存在していることもあります。その場合、社内のどこに、どのデータが、どのように管理されているかを把握することから始める必要があります。そうなってしまうと、データを整理するだけで膨大な時間と工数がかかってしまい、最高データ責任者のメインの仕事とも言える「新たな利益を生み出す戦略を考案する」という工程までなかなかたどり着くことができません。その結果、データ責任者の功績が目に見えず、経営陣からの風当たりがますます強くなってしまう可能性もあります。

そのため、最高データ責任者には、最高経営責任者(CEO)や最高財務責任者(CFO)、最高マーケティング責任者(CMO)など主要経営陣や現場の指揮命令監督権をもつ社員と密にコミュニケーションを図り、味方につけるなどの工夫も求められてきます。

電子化、テキスト化で『企業のデータ』に

書類の山

以上の点も踏まえて、最高データ責任者として責務を全うするためには、まずは社内データの整理からする必要があると言えます。社内データを整理することで、データ分析が可能となり、経営陣を納得させるような精度の高い戦略を提案することができます。

そのためにもまずは、データとして活用できてない情報を電子化テキストデータ化するのがいいでしょう。膨大な社内に眠っている手書きの書類やデータ化されていない資料を電子化していきます。そうすることでデータが管理しやすくなるだけでなく、社内デジタル化に向けた組織改革や情報管理強化も実現できます。

そのままSCANでは「電子化サービス」と「テキスト化サービス」も提供しています。

電子化サービス」では、非破壊スキャナーで書籍や社内報、カタログなどの本を裁断することなくスキャンし、電子データ化します。そのため、絶版になった社内報や貴重な企画書などのできればバラしたくない本をそのままの状態で電子データ化することができます。

この電子化サービスはスキャン品質に徹底的にこだわり、文部科学省をはじめ、東京大学、京都大学など2,500社以上の企業にご利用いただき、年間100万ページ以上の情報を電子化してきました。

また、データ化するだけでなく、電子化に関わる一連のフローをトータルサポートします。今までの事例を参考に、電子化したデータをどのように管理、活用すればいいのかまで提案いたします。

テキスト化サービス」では、紙でしか残っていない資料を100%に限りなく近い精度でテキストデータ化するサービスです。さらに手書きの資料や画像もテキスト化することが可能です。

今までデータ化されていなかった紙媒体の資料をデータに落とし込めば、データ分析も可能になります。また、それだけでなく、紙でしか保管していなかった資料をデータ化することで、パソコン上で資料の検索ができ、大幅な業務効率化を実現します。もう山積みになった書類と格闘する必要はありませんし、資料を汚したり紛失したりするリスクに怯えることもなくなります。

Word形式、Excel形式など納品ファイルは柔軟に対応できるので、自社にとって最も活用しやすい形でデータ管理をすることもできます。社内のデータ管理・統括、IT化に向けた組織強化、そしてデータ分析を一度に実現する「電子化サービス」、「テキスト化サービス」もぜひご検討ください。

まとめ

CDOのイメージ

最高データ責任者について解説してきました。今回の記事を簡単にまとめると、以下のようになります。

  • ビッグデータが普及し始めたインターネット初期に登場したポジションである。
  • 社内外のデータを分析し、経営課題を解決する能力が求められる。
  • 日本での認知度は低く、経営陣の無理解や社内に散らばった非構造データの存在など課題が多い。
  • 資料を電子化することで、担うデータ管理・管轄、分析、組織改革が実現可能。

先述したように、2019年末には世界の大企業の90%は最高データ責任者のポジションを設置すると言われており、最近では日本でも最高データ責任者を導入している会社も増えています。

テクノロジーはこれからもどんどん進歩し、ますます変化の激しい時代に突入すると言われています。未来への不確実性が高まっていくと、より一層データの活用が重要な鍵となります。データがなければ、経営者は経営判断ができずに会社も大きな損失を受ける可能性も大いにあります

どの企業でも今のうちからデータ管理や、組織のITリテラシー強化に向けての対策は急務と考えられ、そういった観点からも最高データ責任者の需要は今後ますます高くなっていきそうです。