【保存版】本が出版されるまでの流れを解説!
昔から「ものごとのおおもと」と言われている本は、わたしたちの生活になくてはならない存在です。絵本があれば百科事典あり、文庫本があれば単行本や豪華装幀本あり、と、本の種類も大きさもいろいろですが、そんな本がどうやって作られるのか、知っている人は少ないのではないでしょうか。
今回は、1冊の本が誕生するまでの工程、それぞれの工程に携わる人たち、さらには、最近普及しはじめてきた電子書籍の作り方なども紹介します。
目次
そもそも本の出版とは?
本の出版とは、簡単に言うと、文書や図画や写真などを印刷にすることによって書籍や雑誌を製作し発行して販売する一連の作業のことです。これに対して、文書や図画や写真などをデジタルデータに変換してコンパクトディスク(CD)などの記憶媒体に記録して販売したり、インターネットを介して販売したりするのが電子出版と呼ばれるものになります。
本が出版されるまでの流れとは?
では、本が出版される工程にはどのようなものがあるのでしょうか。
出版には、大きく分けて、自費出版と企画出版があります。企画出版とは、出版社が企画を立ち上げてその企画にもとづいて本を出版することです。いわば、出版の王道です。ここではその企画出版を取り上げて、その一連の作業にはどのような工程が含まれているのか、またそれぞれの工程にはどのような専門家が携わっているのか、くわしく説明していきます。
企画ありき
日本の出版業界では、毎日200点以上の新刊が発行され、その年間数たるや8万点を超えると言われています。その中で各出版社の編集者は、日々、書店などでどのような本が売れているかなどの市場調査をもとに新しい本の企画を練ります。時には、著者やエージェント(編集プロダクション)から持ち込まれた企画を採用することもありますが、いずれにしても、まず企画がないと出版への扉は開きません。
つまり出版は企画ありき、なのです。そのために編集者はみなさん、日々、魅力のある企画を立てるためにそのことばかりを考えて仕事をしている、と言われています。
さて、編集者によってすばらしい企画が立ち上げられました。それですぐに出版に向けての作業がはじまるかというと、そうではないのです。
次の難関、いえ最大の難関は、その企画が全社的に受け入れられるかどうかです。編集者は、それぞれの企画を持ち寄って企画会議に臨み、プレゼンテーションを行わねばなりませんが、この企画会議は、編集者にとって戦いの場だといっても過言ではありません。
というのも、社長、営業部長、制作部門の責任者、そして編集長の同席のもとで行われるこの企画会議では、まずどのくらいの売り上げが見込まれるのか、営業が売り込むのに支障がないかどうかなど、考えられる限りのありとあらゆるリスクを上げて企画を潰しにかかってくるからです。過去に他社で同じような書籍が出版されていたりすると、その書籍がどのような反響を得て、どれだけ売れたのかなどといったことまで聞かれます。
この企画会議で要求されるのは、編集者がその企画に関してどれほど緻密なデータを収集しているかということと、何よりも、「何が何でもこの企画を通して、すばらしい本を作ってみせるぞ!」という熱い情熱なのです。もちろん1度で採用されない場合もあります。そのときは再度企画を練り直して挑戦するといった意気込みが必要とされます。
そのような厳しい難関を突破して、ようやく本づくりがはじまります。この後にはどのような工程が待っているのでしょう。
1. 原稿の執筆
編集者は、早速著者に企画が通ったことを知らせて、正式に原稿の執筆を依頼します。この時点でまだ著者が決まっていないこともあるようですが、その場合は、企画に見合った作家を探すことからはじめなければなりません。
小説やエッセイなどの場合は作家、実用書などはライターに依頼することになります。しかしいずれにしても、企画は原稿があってはじめて本という形になるために、大切なのは著者であることは言うに及ばずです。しかも編集者は今後、著者と密に連絡を取り合って二人三脚で本を作っていかねばなりません。
ここで大切になるのが、編集者と著者との間の人間関係です。よい人間関係が構築されていればいるほど、両者のコミュニケーションもスムーズになり、それが反映されてよい原稿ができてきます。そういったことを考えると、自分と相性のよい作家やライターをどれだけ知っているかもよい本づくりには欠かせないチェックポイントとなります。
さて、その原稿の執筆依頼ですが、編集者は、まず、電話などで作家やライターの意向を取り付けてから、あらためて著者となる人物に、本のタイトル、ページ数、稿料、締切などを書いた正式な依頼書をメールまたはファックスで送ります。もちろん、それですぐに執筆開始というわけにはいきません。直接何度か会って、内容やスケジュールに関しての細かい打ち合わせを行うことになります。
その編集者の依頼を受けて、著者はいよいよ原稿の執筆にとりかかることになります。1冊の本だと2か月か3か月、ボリュームによってはもっとかかる場合がありますが、脱稿(執筆終了)までモチベーションを下げることなく、よい原稿を書いてもらうためには、編集者のバックアップがかなり大きな功をなすようです。例えば小説などの場合は、ストーリーの流れに行き詰まったり、セリフのニュアンスなどに迷いが生じた時など、編集者の意見を聞くことでスラスラと筆が進むということも多々あります。
この「原稿の執筆」という工程には、著者の作家やライターだけでなく、編集者も携わります。
2. 原稿のデザインワーク・その他の調整
ようやく脱稿となり原稿が著者から編集者へ送られてくると、次は、その原稿のデザインワークに入ります。どういう作業かというと、ページのレイアウトを決めていく作業です。
本の内容に合わせて、字詰めやフォントを検討したり、イラスト、写真、図表、注釈などどこに入れるかを決めていきます。イラストを入れる場合は、どのイラストレーターを使うか決めて仕事の依頼をし、正式に発注をしなければなりません。また表紙や裏表紙、扉、カバーや帯など、本の装丁もこの工程で行われるので、装丁デザイナーとの打ち合わせなども必要になります。
どの作業も本の内容を引き立てるものにしなければならないので、編集者は、その本には、どのイラストレーターのイラストが合うか、どの装丁デザイナーの雰囲気が合うかを見極めなければなりません。ここでも編集者の人脈が問われるのですね。
また、この工程の打ち合わせで決めたことについては、イラストレーターや装丁デザイナーに任せっぱなしにしていると、思わぬミスが生じることがあります。扉の紙が指定したものと違った色で出来上がってしまい、それに編集者が気がつかずにそのまま製本されてしまった、というケースもあります。編集者は、本づくり監督みたいなものです。担当者に任せた後も、最新の注意を払って進捗状況をチェックする必要があります。この「原稿のデザインワーク」の工程には、編集者のほかに、イラストレーターや装丁デザイナーが携わります。
3. 入稿・組版・ゲラづくり
デザインワークが完了したら入稿です。入稿とは、原稿を印刷所へ渡すことを言います。印刷所では、入稿された原稿をベースに組版を行います。組版によって、単なる文字データだった原稿が実際の本のページとなって印刷されます。
組版とは、活版印刷が主流だった昔は、原稿に沿ってページごとに活字を拾い版を組む作業のことでした。拾った活字を並べて結束糸というもので縛って版を組むことから「組版」と呼ばれるようになったのですが、現在では、DTP(デスクトップパブリッシング)という、パーソナルコンピューターを使って文字の割り振りやレイアウトなどを行う作業のことも組版と呼ばれています。ここでいう組版は、そのDTP作業のことを指します。ちなみに、DTPでは、専用のソフトを使うことでレイアウトの微量な調節も可能になり、より美しく質の高い印刷物を作り出すことができます。
さて、印刷所では、この組版によって、まず「ゲラ」というものが刷られます。「ゲラ」とは、一言で言うと試し刷りのことです。実際のレイアウトに合わせて原稿の文字を組んで印刷されたもの、いわばサンプル本のようなものです。校正・校閲作業は、このゲラを使って行われます。
この「入稿・組版・ゲラづくり」の工程は、印刷所のDTP担当者が中心になって進められます。
4. 校正・校閲
次の工程では、上がってきたゲラをもとに「校正・校閲」作業が行われます。
まず、著者自身が目を通して内容に間違いがないかどうか確認します。編集者もチェックします。が、それと並行して、専門家による校正・校閲が行われます。では、その専門家による校正・校閲とはどのような作業なのでしょう。簡単に言うと、校正も校閲もどちらも、ゲラ(本)を客観的な目線で精読し、間違いを見つけて指摘することです。
脱稿時に著者は、「推敲」といって、何度も読み直したり書き直したりして原稿を仕上げますが、この校正・校閲とは、そういった著者の視点による推敲とは異なって、あくまでも一読者の立場で間違いや問題点を探し出して提示する作業のことで、校正は校正者によって、校閲は校閲者によって行われます。では校正と校閲はどう違うのでしょう。
「校正」は、文章の内容ではなく、もとになる原稿とゲラに印刷されている文字を1つずつ突き合わせて、誤字・脱字などの誤植を見つけていく作業です。つまり製作上のミスを見つけることです。また校正では、この「突き合わせ」作業とは別に、「赤字照合」という作業も行われます。赤字照合というのは、校正時に指摘した修正内容がすべて正しく反映されているかどうかを確認する作業のことです。校正者は、校正時に見つけた間違いに関してゲラ上に赤字で「指摘」しますが、この指摘が次校(次に上がってきたゲラ)にきちんと反映されているかどうかを確認するのがこの赤字照合です。これは、いつまでも間違いが残らないようにするためにもとても大切な作業です。
この校正に対して「校閲」とは、原稿だけに対して行われる作業で、そこに書かれている文章とその内容を徹底的に読みこんで、誤字・脱字などの誤植だけでなく、そこに書かれていることの事実確認までも行うことです。例えば、人名や地名などの固有名詞、年代など歴史的な事実、数字の裏付けなどに関して徹底的に調べて間違いがないかどうかを確認し、もし間違いがあればそれを指摘します。また、差別用語が使われていないか、引用されている箇所はないか、などといったことも校閲者によって確認されます。
これは、読者へ誤った情報を届けたり、読者を不快な思いにさせたり、あるいは法的なトラブルを招いたりしないために行われる非常に重要な作業です。会社によっては、校正者と校閲者が分かれて仕事をしているところもあれば、校正者が校閲を、また校閲者が校正を兼任しているところもあります。
校正・校閲を経て赤の指摘が入ったゲラは、著者と編集者も目を通します。著者は、必要であればそこにコメントを書き入れます。編集者は、校正・校閲や著者の赤入れが行われたゲラに間違いがないか確認したうえで、それらをとりまとめて印刷所へ再入稿します。
この校正・校閲の工程は1度だけでなく、完全に赤入れがなくなるまで繰り返されます。初校だけですむ場合もあれば、再校によって二校、三校と刷られる場合もあるようです。この工程の主役は、校正者と校閲者ですが、編集者と著者も携わります。
5. 校了・再入稿・印刷
再校を経て最終的に上がってきたゲラに問題がなければ校了(校正完了)となり、製本用の原稿が完成します。編集者は、その校了となった原稿を印刷所へ再入稿します。
印刷所では、この原稿を元に製版によって印刷用のプレートを作成します。ページの順番に狂いはないか、ページ抜けはないかなどをチェックして、プレートを印刷機にセットすれば、いよいよ印刷の開始です。表紙やカバーや帯は、別途色校正を行ってから印刷されます。
この「校了・再入稿・印刷」工程に携わっているのは、印刷会社の方々、校了宣言に関与している校正者・校閲者、それから編集者です。
6. 製本
次に、印刷所で刷り上がった、「刷本(すりほん)」と呼ばれる用紙、表紙、カバー、帯などが製本所へ回されます。
製本所では、刷本を折り機にかけて折りたたみ、折本(折りたたまれた刷本)を作ります。次に、丁合機(ちょうあいき)に折本がページ順になるようにセットして重ねていきます。この後、並製本や上製本などといった本の仕様に応じて、綴じ機、表紙付け機、裁断機などにかけられて、本の原型が出来上がります。
最後に、カバーや帯をかけ、売り上げカードなどを機械ではさんで、ようやく本の完成となります。この「製本」の工程には、製本所の方々が携わります。
電子書籍のフローは?
電子書籍を作成する工程は、上記の1~4まではほぼ同じです。
今や、電子書籍は、AmazonのKindleやBCCKSといった電子書籍サービスを使えば、個人ベースでもほとんど費用をかけずに作成して販売することができるようになっています。ここでは、その電子書籍を作成して販売する方法について簡単に説明します。
- コンテンツ(文章)をテキストファイルなどで作成
- 見出し・段落・字下げ・リンクの指定
- 電子書籍専用のフォーマットであるEPUB形式に変換(「でんでん」や「BCCKS」などのフリーソフト利用)
- 表紙の画像を作成
- 価格設定
- KindleやBCCKSに公開申請
- KindleやBCCKSにてオンライン販売開始
これだけで、書籍はネット上で流通されます。既定の印税も入ります。テキストファイルがすでにできている場合は、流通に乗るまで半日もかかりません。
ただ、この場合に気をつけなければいけないのは、イラストや写真、図表などを入れる場合のデザインワークです。表紙や裏表紙も自分でデザインを考えなければなりません。素人だとどうしても微調整ができずに、洗練された仕上がりになりにくい、といった難点があります。個人ベースで作る場合は、よほど専門的な技術を持っていない限り、出版社が発行している電子書籍のようにはなかなかいかないようです。
そういった問題は、電子書籍の作成を代行してくれる業者に依頼すると解決することができます。
そのままスキャンの出版データ制作サービス
そのままスキャンでは、紙ベースの出版と電子書籍の出版のどちらにも対応しています。
非破壊スキャナーとOCRソフトを使って書籍に書かれている文字をデータ化するサービスのほか、OCRで読み取られた文字テキストデータを目視で校正するサービスも提供。更に、小ロット低コストでの出版が可能なオンデマンド出版用のデータ、電子書籍用のEPUBデータ制作も行っています。
電子書籍を作成しようとして、デザインワークなどで行き詰まってしまった場合は、文字データを持ってそのままスキャンまでご相談されてはいかがでしょう。
まとめ
本が出来上がるまでの期間は、2~3か月、長いもので1年以上、中にはそれ以上かかる場合もあります。本は、企画から製本されるまでの間、著者や編集者だけでなく、たくさんの専門家の手を通して、ようやく世に送り出されます。これは本を出すという行為に伴う責任の大きさを物語っていると言えるのではないでしょうか。
インターネットが普及した現代、次々に公開されては次々に消えていく一過性の情報が溢れる中、本というものが提供する情報の信頼性、そして本というものの存在価値を、今一度見直してみたいものですね。