コーポレートアイデンティティーって何?電子化で促進させた事例も紹介!
「コーポレートアイデンティティー(略称CI)」は「企業アイデンティティー」とも呼ばれていることからもわかるように、「コーポレート」は「企業」という意味を表す言葉です。では、「アイデンティティー」はどうでしょう。昨今、いろいろなところでこの「アイデンティティー」という言葉が使われるようになっていますが、具体的にそれが何を指しているのかイメージできないことも多いのではないでしょうか。
今回は、この「コーポレートアイデンティティー」を取り上げて、その意味、発祥や歴史、意義や目的などを説明したうえで、コーポレートアイデンティティーの具体的な例、そしてコーポレートアイデンティティーに電子化を活かすメリットなどを解説していきます。
目次
コーポレートアイデンティティとは?
アイデンティティーの語源は英語の「identity」です。こちらを辞書で引いてみると、「身元、正体、本人であること、自己同一性」などといった日本語が連ねられています。
一方で、「主体性やアイデンティティーを持っていない人はすぐに付和雷同する」といった使われ方をすることも多々あります。この場合の「アイデンティティー」は、「独自性、固有性」を表している言葉だと考えてよいかと思われます。
では、その「アイデンティティー」が使われている「コーポレートアイデンティティー」とは、一体何なのでしょう。
意味
小学館の「日本大百科全書(ニッポニカ)」によると、「コーポレートアイデンティティー(CI)」とは、
企業の理念から営業など日常の諸活動までをコミュニケーションの視点から統合し、どの活動も自社を体現する同一性あるものとして表現することを意味する概念。その表現は、社名、シンボルマーク、ブランド、製品デザイン、包装、マスコミ広告、PR誌、PR映画、VTR、看板、ネオンサイン、ポスターから社用箋(せん)、社員のユニフォーム、社屋、自社製品を積んで走るトラックなどを通して行われる。
と定義されています。
つまり、企業がその企業独自の文化や理念を構築し、事業内容やその事業が社会に与える役割や責任、企業や事業の特徴や特性を明らかにして、その企業の統一されたイメージづくりを行い、それを社会へ浸透させていくための戦略だととらえることができます。要するに、企業の顔づくりだと言うことができます。
企業の顔というと、すぐにロゴやシンボルマークを思い浮かべますが、そのほかにも、コーポレートアイデンティティーを構成する要素にはいろいろなものが含まれます。例えば、
- 社名
- ブランド名
- スローガンやコーポレートメッセージ(キャッチコピー)
- コーポレートカラー
- 企業キャラクター
などです。
これらの要素によって一貫されたコーポレートアイデンティティーが構築され、その企業の特性や特徴を表した独自のイメージができ上るために、その先の戦略としてブランディング化もスムーズに進めることが可能になります。
例えば、マクドナルドは、あの黄色の大きなMに「McDonald’s」という文字が重なっているロゴのほかに、赤色と黄色のコーポレートカラーを使っています。街中を歩いていても道路を走っていても、またテレビでも、このロゴと色を目にしただけで、マクドナルドのハンバーガーを思い浮かべることができます。マクドナルドは、コーポレートカラーのほかに、「i’m loving it」というキャッチコピーも使っています。
「明日の空へ、日本の翼」は日本航空のキャッチフレーズです。この言葉を耳にすると、JALの飛行機が目に浮かびます。
誕生・歴史・経緯
一説には、コーポレートアイデンティティーは、1930年代にアメリカで生まれた概念だと言われていますが、その思想が誕生したのはそれよりも早く、1919年ドイツに設立されたバウハウスという建築工芸デザイン研究所にその源を求めることができます。
1930年代にアメリカで生まれたとする説については、フランス出身のR・ローイが1930年代にアメリカでコーポレートアイデンティティーの概念を用いて工業デザインをはじめたこと、さらに、同じく1930年代に、ナチスから逃れてバウハウスが渡米してきたことが大きく関与していると考えられます。つまり、アメリカは、1930年代に入ってから、ドイツやフランスで誕生したコーポレートアイデンティティーの思想の影響を受けたと考えられます。
その後もアメリカでは、1950年代に入り、ロゴマークなどへの関心が高まる中、ビジュアルアイデンティティーの思想が誕生し、1960年代に入って、ビジネスを展開させていくうえで、コーポレートアイデンティティーの確立の必要性が高まっていきます。そして、1989年に、ブランドコンサルティング会社の社長、ウォーリー・オリンズが、企業文化をビジュアル化する戦略として「コーポレートアイデンティティー」を紹介しました。さらに、アメリカでは、1991年にデビット・アーカー(経営学者、マーケティング理論家、コンサルタント)が「ブランド・エクイティ戦略」を発表することで、コーポレートアイデンティティーはブランド戦略へと進化することになります。
日本では、1975年にマツダ(当時の東洋工業)が最初にコーポレートアイデンティティーの計画を導入したと言われています。その後、日本にコーポレートアイデンティティーの最盛期が訪れるのは1980年に入ってからです。1990年に入ると、いろいろな企業がコーポレートアイデンティティーを導入するようになります。2000年代に入ると、日本でも、ブランド戦略に進化し、現代に至っています。
意義・目的
では、そのコーポレートアイデンティティーにはどのような意義と目的があるのでしょうか。
コーポレートアイデンティティーの意義
コーポレートアイデンティティーによって、その企業の顔やイメージづくりが可能になるだけでなく、競合会社との差別化を明確に行い、またその企業の独自性を強く打ち出すことができます。これは、その企業を世間に広く認知してもらうためには非常に有効な手段です。同時に、ユーザーがその企業に抱くイメージアップにもつながります。ユーザーというものは、いつの時代も企業のイメージに敏感です。コーポレートアイデンティティーは、そのユーザーに、企業の理念や体質をビジュアル化という手段でいち早く理解してもらうことができる戦略です。
ネットを介していろいろな情報が瞬時に飛び交う今という時代こそ、企業の独自性や特徴や特性、理念や体質など、素早く伝達し理解してもらうことができるコーポレートアイデンティティーの持つ意義は大きく、大切な企業戦略であると言えます。
コーポレートアイデンティティーの目的
①企業のアイデンティティーを統一させて世間への認知度を上げることでブランディング化の基盤を強固にする:
利益を上げるためには知名度を上げる必要があります。コーポレートアイデンティティーの構成要素であるロゴやシンボルマークは、ユーザーにその企業のサービスや商品・製品を瞬時にイメージさせる上で非常に有効な手段です。世間に広く認知してもらうことに成功したら、つまり知名度が高くなったら、これらの構成要素を用いて、その企業のブランディング化を実現することが可能になります。知名度が低い企業がいくらブランディング化を行おうとしても空回りするだけです。ブランドは、その基盤に知名度があってはじめて功をなす戦略です。
②他社との差別化を図ることができる:
コーポレートアイデンティティーによって企業の独自性を打ち出すことで、他社との差別化を図ることができます。ユーザーは、そういったコーポレートアイデンティティーをチェックし、自分に合ったサービスや商品・製品を選びます。これはつまり、その企業がそういったユーザーに対して社会的責任を負うということでもあります。
③企業そのものの質を向上させる:
上述のように、コーポレートアイデンティティーによって他社との差別化を図るということは、自社の経営理念、経営方針、営業活動、サービスや商品・製品などにすべてに関して、世間に対して責任を負うということです。これはユーザーだけに限りません。その企業のコーポレートアイデンティティーに賛同したり魅力を感じたりして優秀な人材が集まってきます。したがって、企業は常に、自社の経営方針を見直したり活動の在り方や質を見直したり、また従業員の意識改革を行ったりする必要があります。これは、企業そのものの質を向上させていくことが可能になるということです。
④世間とのよりよいコミュニケーションを維持する:
コーポレートアイデンティティーによって自社の企業イメージを世間に定着させるためには、いろいろなユーザーにわかりやすい言葉で明確に、自社に関する情報を発信していく必要があります。また、インターネットが普及した現在では、情報を求めてアクセスしてきたユーザーとのコミュニケーションも一般的な現象となりました。そういった意味でも、社会一般との良質なコミュニケーションを維持し、その企業のイメージをアップさせることが可能になります。
コーポレートアイデンティティの例
キヤノンやソニーなど、コーポレートアイデンティティーにはじまって、やがてブランド戦略によって企業のイメージづくりに成功した会社は数多くありますが、ここでは、時代の要請に応じるべくコーポレートアイデンティティーを活用して、企業のリノベーションや進化を遂げることに成功した企業を紹介します。
伊藤忠商事
量的、経済的な価値だけでなく、精神的、人間的な価値を提供するコーポレートアデンティティーに変更することで成功。
●伊藤忠商事株式会社:https://www.itochu.co.jp/ja/
麒麟麦酒
1983年に コーポレートアイデンティティーを導入し、経営資源の多角化や国際化に焦点を当てた戦略によって、世界に通用する大ビール会社へと成長。
●麒麟麦酒株式会社:https://www.kirin.co.jp/csv/eco/
野村総合研究所
4つの経営理念「使命」、「事業ドメイン」、「経営の目標」、「行動指針」と、「未来創発 Dream up the future.」というコンセプトのコーポレートアイデンティティーを導入することで自社の独自性を展開。
●株式会社野村総合研究所:https://www.nri.com/jp/
トマト銀行
●トマト銀行:https://www.tomatobank.co.jp/
庶民的で誰でも知っているトマトをモチーフに使い、「にんげん大好き」をコーポレートスローガンにしたコーポレートアイデンティティーで成功。
ユニマットライフ
ユナイテッドスチール株式会社から、コーポレートアイデンティティーによってユニマットライフへ変身。
●株式会社ユニマットライフ:https://www.unimat-life.co.jp/
IMAGICA Lab
東洋現像所からコーポレートアイデンティティーによって、映像技術サービスを核とした事業会社IMAGICAへ移行。
●株式会社IMAGICA Lab.:https://www.imagicalab.co.jp/
コーポレートアイデンティティの開発に電子化を
企業の中には、資料の電子化をすることで、コーポレートアイデンティティーの開発や展開を行っているところがあります。具体的には社内発行物や企画書などの『社内資料』の電子化で、こうした資料は企業の歴史や変遷、想いがつまっている為CIの形成としては最適。私たちそのままスキャンでもそういった事例を多数承ってきました。
以下では、その中からいくつかピックアップして、コーポレートアイデンティティーにおいて電子化がどのような役割を果たしているのかを見ていきます。
株式会社ゲームフリーク様
株式会社ゲームフリークは、『ポケットモンスター』シリーズの原作者、田尻智氏が1989年に設立したゲームソフト開発会社です。その社名は、田尻氏らが学生時代に制作していたミニコミ誌「ゲームフリーク」に由来しているとのことです。
この会社では、「ポケットモンスター」がヒットする前の資料、いわば黎明期の資料を電子化してデータで閲覧できるようにしました。どういった資料かというと、田尻社長が学生時代につくったミニコミ誌「ゲームフリーク」や、「ポケットモンスター」ができる前に、ワープロで作成した企画書や開発資料などです。これらは、いわば、株式会社ゲームフリークという会社の歴史を物語る大切な資料であり、コーポレートアイデンティティーを生み出した源でもあります。
このようなコーポレートアイデンティティーの原点となる精神は、新しいプロジェクトに取り組んだり、次の作品を展開していく際に、度々参照して確認しながら作業を進めていく必要があります。そのような場合に、紙ベースの資料のままだと、探し出すのに時間がかかったり、何度も閲覧するうちに破損したりする、といった問題が生じますが、電子化によってデータで保管すれば、どこでも誰でもすぐに、また何度でも閲覧ができます。
「ポケットモンスター」のようにシリーズ化されたヒット作品の場合、原点となった資料を電子化することは、社内的にコーポレートアイデンティティーを常に確認しながら、効率的な作品展開を可能にすると言えます。
こうした詳しい事情や電子化の実施について、ご担当者様より詳しくお話を伺っています。インタビュー記事はこちら。
株式会社WOWOW様
株式会社WOWOWは、日本初の民間有料衛星放送局で、「No.1 プレミアム・ペイチャンネル」として常に上質なエンターテイメントを日本に紹介しつづけています。
この会社では、1984年の設立翌年から制作しつづけている紙ベースの社内報3345ページ分を電子化しました。
社内報は、その企業の歴史やビジョン、コーポレートアイデンティティーのロゴやキャッチコピーの変遷などが詰まっている、いわばその企業の財産です。それを紙ベースのままでバインダーに保管して広報部に置いておくだけではもったいない、ぜひこの財産を全社員共有のものにしたい、というのが電子化に踏み切ったきっかけだったとのことです。実際同社のご担当者様は、電子化した社内報を全社的に共有できるよう社内イントラで保存されているとのことでした。
このように社内報を電子化すると、自社のコーポレートアイデンティティーの成り立ちや歴史や経緯なども確認できて、自社のことをより深く知ることが可能になると言えます。
株式会社船場様
株式会社船場は、戦前に栗山四郎氏が大阪で開業した「栗山ガラス店」からその歴史が始まっていて、半世紀以上にわたって「商環境」創造の最先端を担いつづけている企業です。株式会社船場では、クライアントに向けて発行している研究情報誌「COMMUNION(コミュニオン)」の創刊号(1977年)から146号まで、42年分を電子化しました。
この「COMMUNION」では、国内・海外の商業施設の動向から環境問題、立地論まで、毎号1つのテーマに沿って、さまざまな角度から情報発信を行ってきたとのこと。つまり、この情報誌は、同社の独自性を語るものであり、同社の顔でもあるわけです。そしてコーポレートアイデンティティーの一貫として、クライアントとのコミュニケーションツールとして活躍しつづけているということです。
これを電子化することは、クライアントだけでなく、社員もコーポレートアイデンティティーの1つの構成要素として有効に利用し、ビジネスをスムーズに展開することが可能になります。
こちらもそのままスキャンHP内にて、詳しくお話いただきました。インタビューはこちら。
このように、企業の歴史や研究実績を物語る貴重な資料を電子化することは、その企業のコーポレートアイデンティティーの活動の1つです。つまり、電子化自体、その企業のコーポレートアイデンティティーを広く周知することであると言えます。
株式会社キトー様
企業の歴史をコーポレーアイデンティティーとしそれを広報で使われているのが、国内外で圧倒的なホイストクレーンのシェアを持つ株式会社キトー様。創業80年を超える歴史ある企業ですが、節目節目で周年誌を制作しそれまでの歩みを大切に記録され続けてもいます。
そのままスキャンで電子化したのは同社の30年誌・50年誌・80年誌。いずれも当時のキトー様がいかにして時代にニーズに応え製品開発をされてきたかが関係者のお話等も含め詳細に書かれている一方、同社が創業から変わらず貫いている体制、姿勢なども貴重な情報として記録されています。これはまさに、キトー様のアイデンティティーと言うことが出来ます。
数が少なくなり、すでに貴重書籍となっていた各周年誌は、電子化したことで劣化の恐れや不便さから解放され、同社の歴史を伝える広報資料として活用されているそうです。まさに同社の『変遷』そして『創業から変わらぬもの』というコーポレートアイデンティティーが、社の広報活動で活かされています。
まとめ
キャラクターやロゴ、スローガンやキャッチフレーズなど、目に見えるものだけでなく、その企業が発信する情報すべてがコーポレートアイデンティティーであると言えます。またコーポレートアイデンティティーは、ユーザーにどう見られているかという視覚的にとらえる要素と、自分たちは企業としてどうありたいかといった概念としてとらえる要素が一体となった戦略です。そしてこの2つの要素が同じ方向を向いていれば強固な戦略だと言えます。
自社のコーポレートアイデンティティーについてより深く理解するためには、サービスや商品・製品、ロゴやキャッチフレーズなど、今目に見えているものだけでなく、会社の創業時からの歴史や実績や経営戦略などの変遷を物語る資料を紐解いてみる必要があります。
それによって、自社のめざしてきたものが見えてくるはずです。同時に、新たなコーポレートアイデンティティーの開発に関するヒントやアイデアが得られることもあります。
そういった貴重な資料を電子化することで、コーポレートアイデンティティーの視覚化が可能になります。それによって、より強固な戦略の実践や構築ができるのではないでしょうか。
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