オフセットとオンデマンド印刷の違いとは?

2019.05.27

パンフレットやカタログなどの資料を印刷しようとして印刷会社さんに見積を依頼すると、項目欄にオフセット印刷オンデマンド印刷と表記されているものを見たことがある方も多いと思います。

オフセット印刷とオンデマンド印刷、なぜ、2つの方法があるのでしょうか?

それは、印刷の仕方に向き不向きがあるからです。オフセット印刷とオンデマンド印刷、何かが違うのは分かっても、印刷の方法を知らないと、発注するときに躊躇する場合もあるかもしれません。プレゼンで使う資料なのか、保存しておくような冊子なのか、部数はどれくらいかなど、印刷会社さんは判断して見積を出してくれています。

そもそも印刷物は、日常で使用するプリンターなどのように、4色で印刷されます。4色とは、マゼンタ(赤に近い)、シアン(青に近い)、イエロー、ブラックを指します。オフセット印刷とオンデマンド印刷も、この4色で印刷することには基本的に違いがありません。

しかし、印刷の方法は大きく違っているのです。簡単に言うと、オフセットは、4色をそれぞれの色ごとに高速で印刷します。それに対して、オンデマンドは、4色を同時に1枚ずつ印刷します。

なぜ、このような違いがあるのか。また、ロット数によって適している方法はどちらか。さらに、目的によってどちらを選択した方がよいかを解説していきます

印刷の仕組み

まず、それぞれの印刷方法の概要を見ていきましょう。

オフセット印刷

印刷イメージ

オフセット印刷の特徴を少し難しく言うと、製版された4色用の刷版(刷版:さっぱん)を別々のブランケットから版胴に転写して印刷することです。

写植という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。写植とは印刷物の文字の部分を専用の機械で打ち出したものです。写植をすること自体は稀になりましたが、誤植といった言葉に名残があります。

それに対して、写真などはポジ(ネガの反対で写真のように色が出ているもの)を使用していました。ポジを先ほどの4色に分解して写植された文字と一緒にすることを製版と呼んでいたのです。製版したものはカメラで撮ったり機械で出力してフイルムとしてまとめて、専用のアルミ板である刷版に焼き付けます。ですから、そのときの温度や湿度、また、人のスキルなどによって、微妙に印刷の違いがありました。

しかし、技術は進歩して、今、このような製版の仕方をすることはありません。

IllustratorやPhotoshopというソフトの名前を聞いたことがありませんか?DTP(Desk of Printing)と言って、簡単に言えばパソコンで文字と画像を一緒に制作してしまいます。デジタル化の恩恵と言えます。さらに誕生したのがCTP(Computer to Plate)です。最近では、フイルムから刷版に焼き付ける工程をなくして、DTPのデータをそのまま刷版として出力できるようになりました。

おかげで、工程を省き時間が短縮できるようになっただけでなく、細かい網点も活かすことができるようになったのです。それに伴い、人のスキルによらない、高精細なオフセット印刷ができるようになりました。一方で、実際に印刷する機械のデジタル化は、なかなか進んでいません。印刷物が網点(小さいドット)で表現されていることをご存じの方も多いでしょう。

印刷の過程では、色調整など、やはり人のスキルに頼る部分が存在しています。

オンデマンド印刷

印刷された本

オンデマンド印刷では必要な時に必要な枚数(部数)を印刷することができます。そのため、オンデマンド印刷はPOD(Print on Demand)とも呼ばれます。

簡単に言えば、オンデマンド印刷は高性能なレーザープリンタで印刷することです。オンデマンド印刷の最大の特長は、オフセット印刷のように製版する必要がないことしょう。そのため、時間を短縮できるとともに、1枚から印刷することができるのです。

オンデマンド印刷の具体的な仕組みは、ドラムに磁気を帯びたローラーを接触させて、印刷する部分の圧力を弱めます。そこにトナーを反対の磁気を帯びたローラーとともに接触させ、最後にヒーターとなるローラーで定着を図ります。

家庭用のインクジェットプリンタと似ていそうですが、印刷の方法に加えて、性能、品質ともオンデマンド用の印刷機の方が上回ります

オフセット印刷のメリット・デメリット

それでは、これら印刷方法にはどんな長所と短所があるのでしょうか。オフセット印刷から見ていこうと思います。

オフセット印刷のメリット

メリット

オフセット印刷の代表的なメリットは以下の4つです。

  1. 印刷スピードが速い
  2. コストパフォーマンスが良い
  3. 特色を印刷できる
  4. いろいろな紙に印刷できる

1.印刷スピードが速い

オフセット印刷は、オンデマンド印刷に比べて、印刷スピードが格段に速いです。

オフセット印刷にも2種類あって、1つは枚葉機、もう1つは輪転機です。輪転機は新聞を印刷している写真などを見た方は想像がつくと思います。刷りだす始めに人の手によるアナログで色を合わせて、いざ本番となります。

2.コストパフォーマンスが良い

部数が増えれば増えるほど、オフセット印刷のコストパフォーマンスが良くなります。オンデマンド印刷では、1部単位の単価であるため、このようなメリットは発生しません。

最初に刷り出しロスがありますが、あとは1万部くらいまで刷版は耐えることができます。

3.特色を印刷できる

オフセット印刷では、4色以外の特色を印刷することができます。通常は4色で印刷しますが、4色では出ない金色などを印刷することも可能です。

また、CI(コーポレイトアイデンティティ)を定めている企業や団体は、特色の指定がある場合があります。色校正のときには、インクを混ぜて特色を作っているので、本番の印刷では、とくに注意する必要があります。

4.いろいろな紙に印刷できる

オフセット印刷では、印刷用として販売されている紙なら、ほぼ印刷することができます。オンデマンド印刷では、コーティングされている紙など、熱で溶けてしまう危険性があり、印刷することができません。

オフセット印刷のデメリット

積み上がった書類

一方でデメリットは以下の通り。

  1. アナログに頼る現状
  2. 1度に数千部を印刷する
  3. 環境負荷が高い
  4. 納期がかかる

1.アナログに頼る現状

オフセット印刷にCTPが導入されても、最後の印刷の時点では、アナログ、つまり人の手による現状があります。インクの量などの加減を人が見るからです。しかし、一般的に、インクを使用している分、オンデマンド印刷よりきれいに発色します。

2.1度に数千部する必要

コストパフォーマンスは高いものの、その恩恵を享受するためには、数千部する必要があります。数十~数百程度の印刷なら、オンデマンド印刷の方が向いています。だいたい、1,000部くらいからコストパフォーマンスが良くなります。

3.環境負荷が高い

オフセット印刷では、色の調整のために、本番の印刷に入る前に刷り出しで確認します。

その刷り出しは余丁(よちょう)として廃棄することになるため、環境負荷が高いと言えます。それ自体は、印刷の特性上変えられませんが、大豆インキや森林認証の紙を使うことにより、負荷の軽減を図ることができます。

4.納期がかかる

機械のボタンを押せば印刷できるオンデマンド印刷と違って、オフセット印刷ではブランケットに刷版をかけるなどの工程が多く、短納期には向きません。しかし、一度、印刷が始まればオンデマンド印刷より早く印刷できます。

オンデマンド印刷のメリット・デメリット

一方、オンデマンド印刷はどうでしょうか。想像がつくかもしれませんが、基本的にはオフセット印刷の反対となります。

オンデマンド印刷のメリット

オンデマンド印刷された書籍

メリットは、オフセット印刷には無いデジタルを活かした部分が挙げられます。

  1. 必要な時に必要な部数を印刷できる
  2. 差し込み印刷をすることができる
  3. 均一に印刷できる
  4. 短納期にすることができる

1.必要な時に必要な部数を印刷できる

小ロットであれば、オンデマンド印刷の方にメリットがあります。ブランケットに刷版をかけるなどの工程がなく、製版する必要もないからです。必要な部数を印刷する指示を機械に与えるだけです。

2.差し込み印刷をすることができる

オンデマンド印刷であれば、印刷物の一部を変えることができます。例としては、賞状の印刷などがあげられます。

3.均一に印刷できる

オフセット印刷のように印刷に人が関わることがないので、アナログな部分はなく、完全にデジタルで印刷します。そのため、印刷の仕上がりに色の変化などがなく、均一に保つことができます。

4.短納期にすることができる

DTPのデータを直接オンデマンドの機械に流すことができるので、短納期にすることができます。また、インクではなくレーザーでの印刷のため、紙を乾燥させる工程も必要ありません。

オンデマンド印刷のデメリット

デメリット

魅力的なオンデマンド印刷ですが、デメリットも無い訳ではありません。

  1. 発色が劣る
  2. コストが高いケースがある
  3. 印刷ムラが発生しやすい
  4. 特色の印刷ができない

1.発色が劣る

インクで印刷していないため、発色の点ではオフセットより劣ることは否めません。しかし、最近のレーザープリンタは性能が良くなってきて、遜色ないくらいになってきています。

2.コストが高いケースがある

オンデマンド印刷は、1部ずつ印刷するために、どうしてもコストが高くなってしまいます

トータルの金額で見た場合、小ロットでもオフセットと同じくらいになることもあります。見積を依頼すると同時に、納期なども検討する必要があるでしょう。

3.印刷ムラが発生しやすい

ベタ塗りや薄い色を印刷するときに、ムラが発生することがあります。機械の特性を考えて、デザインをする必要があります。

4.特色の印刷ができない

レーザープリンタでは、特色の印刷はできません。どうしても特色で印刷する必要がある場合には、オフセットで印刷することになります。したがって、金銀などは表現できません。

まとめ

適切な印刷を

印刷の方法について見てきました。オフセット印刷、オンデマンド印刷、それぞれに特徴があることがわかりました。

オフセット印刷ならではのメリットは、大きなロットで効果を発揮することです。今後、CTPができたようにデジタル化はいっそう進むと考えられます。また、発色が良い点も考慮すべきポイントでしょう。

一方でオンデマンド印刷も、長年、オフセット印刷より仕上がりが劣るとされてきましたが、現在では遜色ないくらいまで進歩してきました。小ロットでバリュアブルに印刷したいときなどは、オンデマンド印刷が適しています

制作したい印刷物に合わせて、ケースバイケースでオフセット印刷かオンデマンド印刷を選択していくといいでしょう。

PODそのままスキャン

PODそのままスキャン

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